この記事では、ヒメゴトのネタバレを含んだあらすじや感想について知ることができます。ヒメゴトは、由樹・カイト・未果子のそれぞれの過去と関係性が、緻密に練られた無駄のないストーリーで描かれています。
ヒメゴト〜十九歳の制服〜は、ぜひ漫画で実際に読んでいただきたいですが、この記事でも、結末について少しだけ触れています。
ヒメゴトのネタバレ
1巻
花森大学に入学して、3ヶ月が過ぎた。季節は春から夏へ移り変わろうとしている。とにかく、十九歳の夏は、ひどく蒸し暑い。ただ、暑いと感じているのは、夏の暑さのせいだけではない。
あたしには二つの呼び名がある。一つは本名である“ユキ”。もう一つは“ヨシキ”。昔から男っぽい性質だったせいで、中学の時に男友達の祥につけらた。その名付け親の祥は、中学を卒業してからも、高校、大学までいつも、由樹の隣にいる。
せっかく、わざと自分を知る人のいない大学にいって、今の素直な自分をだしてみようと思っていたのに、祥がついてきたせいで、決別しようと思ってた“ヨシキ”という名前がまたついてきた。
あたしはまた、大学4年間を“ヨシキ”で過ごさなくちゃいけないの?人前でスカートを履くこともなく、自分を慰めるためだけにスカートを履いて・・。
そう思っていたあたしは、未果子と、カイトに出会う。
2巻
アタシ(カイト)にとって、女の子は鏡。魅力的な女の子が現れるとね、アタシはその女の子になりたいって思うの。一緒にいたいとか、抱きたいとかじゃなくてね。
だから目の前にいる女の子は鏡に映る自分なの。その中でも、永尾未果子は、完璧でアタシの理想とする女の子。
アタシに残された時間はあとわずか。今こうしているうちにも、どんどん女の子が似合わなくなっていく。だから、アタシは、“女の子”であることを無駄遣いしている由樹を見ていてイラ立つようになった。
でも今は、由樹と女友達としていられる時間が、ものすごく楽しい。由樹には女の子のアタシを見て欲しい。女の子として褒めてほしい。尊敬されたい。
女友達としてずっといてほしい。
3巻
私(未果子)は、温もりに飢えている。
私にとってヨシキは、理想の男の子。手を繋いで歩くことを恥ずかしがったり、恋愛の話をしようとすると顔を赤くする。
雨の中で繋いだヨシキのては温かい。離さないで。このままどこまでもいい、連れていって・・。
ヨシキは本当に可愛い。小ちゃな蕾みたい。このままでいいのに。このままずっと、変わって欲しくない。
花が開くと誰かが摘みにくるなら、私はこの蕾を開かせない。
4巻
「恋してるねー。」街中で通りすがりの女友達の会話が、あたし(由樹)の心の中でずっとわからなかった疑問に答えてくれた。
あたしは、相葉カイトに恋をしている。
あたしが好きな相葉カイトは、永尾未果子に憧れている。もし、未果子がカイトの本当の気持ちを知れば二人はすぐにでも付き合える。
だから、あたしは未果子の前で芝居をした。「未果子が好き。」その言葉を聞いた未果子は、とても嬉しそうだった。
未果子の心を掴んでさえいれば、未果子はカイトに振り向くことはない・・
これまで“ヨシキ”として男の子を演じてきた、これからは未果子の“恋人”を演じればいい。
ただ役割が増えるだけなのに、どうしてこんなにも心が乱されているのだろう。
5巻
私(未果子)とあなた(カイト)は似てる。私はヨシキと“恋人ごっこ”をして、性欲は他所で満たす。
あなたは、由樹と“女友達ごっこ”をして、性欲は他所で満たす。でも、私とあなた、一つ違うところがある。
それは、誰にも言えない秘密をあなただけヨシキに受け入れられたこと。
あなたは、「由樹に私の秘密を受け入れさせはしない。」と言う。だったら、あなたが私の秘密を受け止めてよ。
6巻
私(未果子)は、男に貢いで、男に騙されたあのバカとは違う、男に貢がせて、男を騙すんだよ!
貢がせたお金は、そのまま私の価値。私の価値は、この制服が証明してくれる。
この制服を着た私は輝いて見える。だから、たくさんの人がたくさんお金を払う。
それに私の実家はとても貧乏で、普通のバイトしてたら大学さえ通えない。・・といっても、私が、体を売るのはお金のためだけじゃない。
私は、汚れないと気持ちよくなれないから・・。
7巻
アタシ(カイト)は、由樹じゃなくて未果子を選んだ。でも、それは普通の好きとは違う感情。あんなことになったのに、未だにアタシは未果子に憧れている。
由樹との女友達ごっこは、もう終わりにする。というより、もうとっくに、由樹がアタシに“女友達”ではなく“彼氏”の役割を求めた時点で終わっている。
アタシは、あんたの“彼氏”になることはない。アタシが楽しいと思えたのは、由樹と女の子の格好して、買い物したりすること。
本当は、もっと早くいうべきだった。未果子が由樹に近づかないようにするんじゃなく、由樹が未果子の心を繋ぎとめようとする理由を失くせばいいだけの話。
由樹、アタシたちもう今日でお別れ・・
8巻
あたし(由樹)は変わりたくて、わざわざ遠い大学を選んできた。“女友達ごっこ”をするためでも、“恋人ごっこ”をするためでも、“家族ごっこ”をするためでもない。
“ごっこ遊び”をやめて、自分に割り振られた役割を脱ぎ捨てるために、今、ここにいる。
高校の卒業式を終えて、制服のスカートを脱いだら、これからは何が自分を女の子だと証明してくれるのだろうと思った。
はじめから、証明する必要なんてなかった。あたしは、ただ、十九歳の制服を脱ぐことができればよかったんだ。
結末のネタバレ
ヒメゴトの結末、最後のシーンは、ヨシキではなく、ユキとして堂々と女らしくいられるようになった由樹の笑顔で締めくくられています。
最初は、人前でスカートを履いたり、女の子らしく振る舞うことが全然できなかった由樹が、どのような道を辿って、そうなったのか。
由樹が、女の子らしくなるためには、カイトと未果子の存在が欠かせません。二人との、ぐちゃぐちゃに絡まった関係性の中で、もがき苦しんだ末に、ようやくたどり着くことができたのです。
ヒメゴトの最終回で、由樹の高校時代の友人が、「彼氏はどんな人?」と由樹に聞くのですが、「秘密。」とはぐらかしています。
由樹の彼氏は一体誰なのか?カイトなのか、それとも祥なのか・・。結末は、ぜひ漫画でご覧ください。
ヒメゴトの感想と考察のまとめ
ヒメゴトを読んだみんなの感想
微妙な年頃な上に、大学で、いろんな複雑な事情を抱えていたりしてる人たちが、その複雑な人生や出会いが重なって、誰かのために、と言いながら、結局は、自分の為に、駆け引きの間で、深みにハマってしまう。私は先が気になって、一気読み。実に気持ち良くポイントを数千消費しました。人の抱える闇の部分が上手く表現されていて、どう決着をつけるのか、気になって仕方なくなります。女装男子、援交、ス〇ーカー、セッ〇スシーンは多いのですが、そんなところも含めて、とってもいい出来になっていると思います。
10代の1819歳の複雑なきもち。大人のようで子どもでもない自分でも処理しきれないきもち。
そして誰にでもある隠したい裏の顔、でもそんな裏を本当は見せたい見つけてほしいという思い。
いつの間にか忘れてしまったけれど、そんな思いが自分の中にもあったなぁと思い出すことが出来ました。
一話読みだすと最後まで止められなくなります!
滅多にレビューはしないのですが、そこら辺にある陳腐な本を読むのに使うくらいなら是非これを読むためにポイントを使って欲しいと思って書きました。
この物語に出会えて良かったです。それくらい素敵な読み物でした。
ひさしぶりにこんなに面白い漫画読みました。
えぐい部分もありつつ、でも人間の本性を表しているなあという感じ。
平凡の中の非凡。
自分の中で当たり前でも、他人には少し異常な悩みってありますよね。
そのきっかけは、とてもなんでもないことへのコンプレックスから始まっていたりする。
最後まで読めて良かったです。
話数は多いけど、読みかけたら最後まで絶対読んでほしい作品です。
すっきり完結しているので続編はなさそうですが、完結して寂しいです。
女の子最高ー!₍₍ ◝(‘ω’◝) ⁾⁾ ₍₍ (◟’ω’)◟ ⁾⁾
ヒメゴトを読んだ感想
制服を着るということは、体温を保つ目的の他に、自分に役割をもたせたり、何かを演じるためでもあります。
白衣を着れば医者や科学者の役割。スーツを着ればビジネスマン。
全てではないですが、それは、本来の自分ではない、“ごっこ遊び”をしていること。白衣やスーツを着るだけで、その制服を着た人のイメージや役割を演じようとします。
本来の自分を偽って、人の真似だけしたり、人に言われた通りに生きることはとても楽です。
由樹とカイトも、一度は本来の自分を殺そうとしたけど、思いとどまっている。二人が思いとどまることができたのは、お互いの存在があったからかもしれません。
たった1人だけでも、本当の自分の秘密を含めて、全てを見せることができる存在がいれば、他の意見や、批判など、まるで気にしなくて済むようになります。
ヒメゴトは、表紙からは想像できないほど、緻密なストーリーで、複雑な人間関係を描く名作です。