2017年に公開された実写映画『鋼の錬金術師』は、多くの議論を呼んだ作品として記憶されています。原作ファンからは厳しい意見が多く寄せられた一方で、映像技術や一部のキャストについては評価する声も聞かれました。
今回は、なぜ鋼の錬金術師実写が「ひどい」と言われるのか、その理由とキャストの評価について詳しく見ていきましょう。
鋼の錬金術師実写の基本情報
まずは作品の概要から確認していきます。
作品概要
2017年に公開された実写映画『鋼の錬金術師』は、荒川弘による人気漫画を原作とした作品です。監督は曽利文彦、主演は山田涼介が務めました。
物語は、錬金術が存在する世界で、亡くなった母親を蘇らせようと禁忌である人体錬成を行い、その代償として体の一部を失った兄弟の冒険を描いています。エドワード・エルリック役を山田涼介、アルフォンス・エルリック(声)を水石亜飛夢が演じました。
興行成績と評価
映画は11.1億円の興行収入を記録しましたが、制作費を考慮すると決して成功作とは言えない結果となりました。各映画レビューサイトでの評価も分かれており、原作ファンと一般観客の間で大きな温度差が見られました。
「ひどい」と言われる主な理由
実写版が批判される理由は複数ありますが、特に多く挙げられる点を整理してみました。
原作からの大幅な改変
最も多く指摘されるのが、原作からのストーリー改変です。ハクロ将軍やショウ・タッカーのキャラクター設定が大きく変更され、原作とは別人物のような扱いになっていました。
ショウ・タッカーは原作では陰のある研究者として描かれていましたが、映画では明確な悪役として描写されています。また、ハクロ将軍も黒幕的な存在に変えられ、原作を知るファンには違和感を与える結果となりました。
キャスティングの問題
中世ヨーロッパ風の世界観を舞台とした作品でありながら、全員が日本人キャストで構成されていることに違和感を覚える視聴者が多くいました。特に金髪のウィッグを使用したキャラクターの見た目に「コスプレ感」を感じる声が多数上がりました。
世界観の再現度
原作の持つ独特な世界観を実写で表現することの難しさも批判の対象となりました。衣装や建物、全体的な雰囲気が「特撮ヒーロー」のようだという意見や、「イメージビデオ」のような印象を受けたという声もありました。
主要キャストの評価
続いて、各キャストの演技や配役について詳しく見ていきましょう。
山田涼介(エドワード・エルリック役)
主人公のエドワード・エルリック役を演じた山田涼介については、賛否が分かれる結果となりました。
肯定的な意見
- 体格や見た目が原作のエドに近い
- アクションシーンでの身体能力の高さ
- 熱血漢な性格の表現力
否定的な意見
- セリフ回しが不自然で棒読みに聞こえる場面がある
- 原作のエドの複雑な感情表現が足りない
- 年齢設定と実際の演技力のギャップ
本田翼(ウィンリィ・ロックベル役)
ウィンリィ役の本田翼については、特に厳しい意見が多く寄せられました。
原作よりも出番が増やされていたにも関わらず、「どこから見ても本田翼本人にしか見えない」という指摘が多数ありました。キャラクターに入り込めておらず、役作りの甘さが目立ったという評価が大半を占めています。
ディーン・フジオカ(ロイ・マスタング役)
ロイ・マスタング役のディーン・フジオカは、ビジュアル面では高く評価されました。
見た目や雰囲気は原作のマスタングにかなり近く、期待値も高かったのですが、「ディーン・フジオカそのまま」という印象が強く、キャラクターとしての魅力を十分に表現できていなかったという声が多く聞かれます。
ホムンクルス役キャスト
意外にも高評価だったのが、敵役のホムンクルスを演じた俳優陣です。
松雪泰子(ラスト役)
- 妖艶さと恐ろしさを兼ね備えた演技が評価
- 原作のイメージに最も近いキャスティング
本郷奏多(エンヴィ役)
- 中性的な魅力を活かした役作り
- 原作の不気味さをよく表現
内山信二(グラトニー役)
- 体格を活かした迫力ある演技
- コミカルさと恐ろしさのバランスが良好
大泉洋(ショウ・タッカー役)
大泉洋のショウ・タッカー役は、原作とは大きく異なるキャラクター設定になっていましたが、俳優としての演技力は評価されました。ただし、原作ファンからは「別キャラクター」として見られることが多く、改変への不満の声が多く上がりました。
続編への反応
2022年には完結編として二部作での続編が公開されましたが、これに対する反応も複雑です。
前作の不評を受けての続編制作
前作が批判的な意見を多く受けたにも関わらず続編が制作されたことに、多くのファンが困惑しました。「なぜ続編を作るのか」という疑問の声が多く上がり、制作側の意図に対する不信感も見られました。
新キャストの評価
続編で新たにスカー役を演じた新田真剣佑についても、「イメージと違う」という批判が多く寄せられています。原作のスカーの持つ重厚感や威圧感を表現しきれていないという意見が目立ちました。
良い評価もある実写版の魅力
批判的な意見が多い一方で、評価すべき点も確実に存在します。
VFXと映像技術
CGやVFXの技術については、多くの観客が高く評価しています。アルフォンスの鎧姿の再現度や、錬金術を使用する際の視覚効果は、原作の世界観をよく表現できていました。
一部キャストの好演
ホムンクルス役の俳優陣や、脇役を演じた実力派俳優たちの演技は、作品全体のクオリティを支える重要な要素となっていました。
実写化の難しさ
『鋼の錬金術師』の実写化が困難だった理由を考えてみます。
原作の完成度の高さ
原作漫画の完成度が非常に高く、ファンの思い入れも強い作品であることが、実写化を困難にしている大きな要因です。すでに多くの人の心の中に確立されたキャラクターイメージを、実写で再現することの難しさが浮き彫りになりました。
世界観が特殊
中世ヨーロッパ風でありながら、錬金術という非現実的な要素を含む世界設定を、現実の俳優と技術で表現することの限界も見えてきます。
まとめ
鋼の錬金術師実写が「ひどい」と言われる理由は、原作からの改変、キャスティング、世界観の再現度など複数の要因が重なったものです。
しかし、映像技術や一部のキャストの演技など、評価すべき点も存在します。原作を知らない観客からは比較的好意的な意見も聞かれており、見る人の立場や期待値によって評価が大きく変わる作品と言えるでしょう。
人気漫画の実写化は常に賛否両論を呼ぶものですが、『鋼の錬金術師』の事例は、原作への敬意とファンの期待に応えることの難しさを改めて浮き彫りにした作品として、今後の実写化作品への教訓となっています。