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「斜め上」の意味とは?レベルEのアニメがひどいと言われる理由

「斜め上」の意味とは?レベルEのアニメがひどいと言われる理由

普段何気なく使っている「斜め上」という言葉。実はこの表現、あるマンガ作品が生みの親だったことをご存知でしょうか。

今回は「斜め上」の意味や由来、そしてその元ネタとなった「レベルE」について詳しく見ていきます。特にアニメ版が「ひどい」と言われる理由についても探っていきましょう。

「斜め上」の意味とは

「斜め上」の意味とは、予想とはまったく違った方向に物事が進んだり、予想できない考えを意味する言葉です。

この表現は、賞賛するときにも、逆に皮肉を言うときにも使われるネット用語として定着しています。たとえば「あの人の発想は常に予想の斜め上をいく」といった使い方をします。予想を超えるときは「予想を上回る」と表現することが多いですが、予想外の事態に遭遇したときは「斜め上」という言葉がしっくりくるのです。

面白いことに、この「斜め上」という表現は、2015年に三省堂辞書を編む人が選ぶ「今年の新語2015」の10位に選出されるほど、一般的な日本語として認知されるようになりました。

「斜め上」の元ネタとは

この「斜め上」という言葉の元ネタとされているのが、冨樫義博のマンガ『レベルE』です。

作品中には「斜め上」という言葉が登場しますが、実は「予想の斜め上」という表現そのものは出てきません。それでもこの作品が元ネタとされるのには、明確な理由があります。

クラフト隊長のセリフが起源?

作中で主人公のドグラ星第1王子、バカ=キ=エル・ドグラ(通称バカ王子)の護衛を務めるクラフト隊長が発したセリフが、この言葉の起源となっています。「あいつの場合に限って常に最悪のケースを想定しろ 奴は必ずその少し斜め上を行く!!」というこのセリフが、ネット用語として広まるきっかけになったのです。

クラフト隊長は自由奔放なバカ王子にいつも振り回されており、王子を奴呼ばわりするほど手を焼かされていました。このセリフは、バカ王子が地球で行方をくらました際、甘い考えで王子を追う部下に対して発せられたものです。

作中でのセリフが元ネタ?

さらに作中では「こいつは常にオレ達の想像の斜め上をいく」というセリフも登場します。むしろこちらの方が「予想の斜め上」という現代の使われ方に近いかもしれません。

起源は諸説あり

三省堂国語辞典の編集委員である飯間浩明氏によると、「斜め上」の語源については様々な説が流れているそうです。たとえば魔夜峰央の『パタリロ!』が最初だという意見もありましたが、証拠となるものは見つかりませんでした。松本人志の『遺書』にも「斜め上」というワードが出てきますが、そこでは「一般のレベルよりやや上」という異なる意味で使われています。

こうした調査を経て、明確に出典が確認できる『レベルE』が語源だと結論づけられたのです。

『レベルE』とはどんな作品なのか

『レベルE』は1995年から1997年にかけて週刊少年ジャンプで連載された、冨樫義博によるSF漫画です。

物語の中心にいるのは、見た目はイケメン王子でも中身は超変人なエイリアン、バカ王子。彼が地球にやってきた瞬間から、周りの人間はとんでもない事件に巻き込まれていきます。

バカ王子という名前ですが、その実態は天才的な頭脳と計算高さを持ち合わせた、地球史上最悪レベルのトリックスターです。彼の行動は一見ふざけているだけに見えますが、すべてが計画的で、相手の心理を巧みに操りながら事件を引き起こします。

この作品の最大の特徴は、一話ごとに空気感がガラリと変わることです。初回はミステリアスな雰囲気で始まり、次のエピソードでは一転してコメディ全開のドタバタ劇になったりします。別の回では、ホラーのような緊張感ある展開や、少年マンガ的な熱い友情ストーリーが描かれることもあります。

2011年にはテレビアニメ化もされ、全13話が放送されました。

アニメ版がひどい?

アニメ版『レベルE』について調べると、「ひどい」という声が一部で聞かれます。しかし、これは必ずしも作品のクオリティが低いという意味ではありません。

「ひどい」の正体

むしろ「ひどい」という言葉は、バカ王子の破天荒すぎる行動や、予測不能な展開に対する視聴者の驚きと賞賛を込めた表現であることが多いのです。つまり、良い意味での「ひどい」なのです。

バカ王子が仕掛けるいたずらや作戦は、予想外の展開を生み、周囲を混乱の渦に巻き込みます。その振り回され具合があまりにも凄まじいため、「こんなのひどすぎる!」という感想が出てくるわけです。

ジャンル乱高下

また、エピソードごとにジャンルが大きく変わるため、テンポの好みが分かれる可能性もあります。「もっと王子が活躍する回が見たい」と思っていると、王子がほとんど出ない回が続くこともあるのです。このバリエーションの豊かさが魅力でもあり、人によっては物足りなさを感じる部分にもなっています。

回ごとに別世界

作画と演出のトーンが回によってバラつきがあることも、評価が分かれる要因の一つです。ジャンルが変わる関係上、わざとテイストを変えているのですが、その差が大きい回では「急に雰囲気が変わった」と感じる人もいるでしょう。

『レベルE』の真の魅力

とはいえ、『レベルE』は間違いなく名作と呼べる作品です。この作品の魅力は、何よりもその自由さにあります。シリアスもギャグも同じ熱量で描ききっているからこそ、一話ごとに空気感が変わるのに、全体を通して「レベルEらしさ」がしっかりと保たれているのです。

バカ王子の予測不能な行動にツッコミを入れる人間たちが、視聴者の代弁者のような役割を果たしているのも巧みです。だからこそ、観ている側はただ振り回されるだけではなく、一緒に物語に参加しているような感覚を味わえます。笑って、驚いて、ちょっと考えさせられる。そんな感情のジェットコースターを味わえるのが『レベルE』の最大の魅力なのです。

最後に

「斜め上」という言葉を生み出したこの作品は、まさにその言葉通り、常に視聴者の予想を裏切り続ける傑作と言えるでしょう。予測不能な展開にワクワクしたい人、刺激的なSFをライトに楽しみたい人に、全力でおすすめできる作品です。