2017年まで別冊少年チャンピオンで連載され、瀬戸と内海が河原で会話を繰り広げるだけの日常系漫画として親しまれた『セトウツミ』。しかし、最終回付近で急展開を見せ、読者を驚かせました。本記事は、『セトウツミ』ネタバレ注意です。
『セトウツミ』とは?作品の基本情報
此元和津也先生による『セトウツミ』は、2013年から2017年まで別冊少年チャンピオンで連載された人気作品です。大阪の男子高校生、瀬戸と内海が放課後の河原で繰り広げる関西弁の会話劇が魅力でした。「この川で暇をつぶすだけのそんな青春があってもええんちゃうか」というキャッチコピーの通り、特に大きな事件も起こらない穏やかな日常を描いています。全8巻59話という比較的コンパクトな構成ながら、映画化やドラマ化もされた注目作品です。セトウツミ 映画 ひどいという声もあり賛否両論の作品。原作ファンからは厳しい意見も寄せられましたが、原作の魅力を理解するためにも、まずは漫画版から読み始めることをおすすめします。
『セトウツミ』ネタバレ
作品の大半は瀬戸と内海の他愛もない会話で進行していましたが、57話から急激に様相が変わります。
内海の家庭環境が明らかに
これまでほとんど触れられることのなかった内海の家庭事情が、突然明かされました。内海は幼い頃こそ天才と呼ばれていたものの、実際は障害を抱えており、両親からは「内海家の面汚し」として扱われていたのです。特に父親からの扱いはひどく、家にいても存在しないものとして無視される日々。そんな絶望的な状況に追い詰められた内海は、とんでもない計画を実行に移そうとします。
両親殺害計画?
内海が考えた解決策は、家を燃やして両親を殺害するというものでした。これまでの穏やかな日常系作品からは想像もつかない、サスペンス要素の強い展開に多くの読者が驚愕しました。しかし、この計画は瀬戸によって阻止されます。瀬戸が内海の異変に気づき、友人として彼を救ったのでした。
最終回「瀬戸と内海」の詳細解説
最終回のタイトルは作品名と同じ「瀬戸と内海」でした。これ以上にふさわしいタイトルはないでしょう。
サッカー部に復帰した瀬戸
物語はサッカー部に戻った瀬戸が時田とランニングをする場面から始まります。ブランクがある瀬戸は息を切らしながら、いつもの川辺の階段で休憩しました。この場面は、これまでの瀬戸と内海の思い出の場所での対比として印象的に描かれています。瀬戸がサッカー部に戻ったことで、二人の関係性にも変化が生まれていることが示唆されています。
一人でも河原に通う内海
瀬戸がいなくなった後、内海は一人でいつもの場所に現れます。目的は野良猫のニダイメにご飯をあげることでした。この場面で重要なのは、内海が一人になっても河原での時間を大切にしていることです。瀬戸との思い出の場所を守り続けている内海の心境が伝わってきます。
LINEでつながる二人の絆
物理的には離れている二人ですが、LINEを通じて相変わらず楽しい会話を続けています。ニダイメの世話を曜日で分担するなど、友情は健在であることが分かります。特に注目すべきは、LINEのアイコンです。瀬戸は自分とニダイメの写真、内海は最初メガネだけでしたが、最後に瀬戸から送られた楽しそうな写真に変更されています。
樫村さんとの関係進展
内海がLINEをしている最中、樫村さんが現れて「瀬戸ロス」を心配してくれます。そしてなんと、この場面で内海にキスをしたと思われる描写が。この展開は読者にとって大きな驚きで、これまで内海に想いを寄せていた樫村さんとの関係が、ついに進展を見せたのです。
各キャラクターのその後
最終回では、これまで登場したキャラクターたちがそれぞれの道を歩んでいる様子が描かれました。田中真二は相変わらず一人でいることを好んでいましたが、蒲生から「瀬戸と内海に出会って俺もお前も救われた」と言われ、二人の存在の大きさが改めて示されます。鳴山は就職活動中らしく、スーツ姿で大人びた姿を見せていました。ハツ美は相変わらず上から目線で瀬戸を励ましており、彼女らしい一面を見せています。
見事な伏線回収の数々
最終回では、これまでの何気ない会話に隠されていた伏線が次々と回収されました。
河原林五郎の正体
これまで瀬戸を騙そうとする詐欺師として登場していた河原林五郎ですが、実は内海の父親に雇われて二人を引き離そうとしていたことが判明します。しかし、河原林は内海をよく観察しており、最終的には内海の父親に対して「あんたの方が病気ですわ」と言い放ちます。この言葉は、内海を理解し擁護する大人の存在を示しており、読者にとって救いとなる場面でした。
内海の母親の変化
物語の最後で、内海の母親が息子に話しかけ、弁当を作ってくれると約束します。これまで父親に従って内海を無視していた母親の変化は、家族関係の改善を示唆する重要な描写です。
バルーンさんと瀬戸の祖父
バルーンさんが一人で河原にいる場面で、瀬戸の認知症の祖父が徘徊で現れます。「ワタシです。お師匠さん」と話しかけるバルーンさんに、祖父は一瞬正気に戻って「頑張ってるな。よう頑張ってる」と声をかけます。この場面は、認知症という困難な状況の中でも人間の温かさが失われていない様子が描かれ、作品全体のテーマである「人とのつながり」を象徴しています。
残された謎と考察
最終回を読んでも、いくつかの謎や疑問が残されています。
「2月19日コの川でおれがお前をたすけニ行く」の意味
この縦読みメッセージについて、最終回では直接的な言及がありませんでした。これは、メッセージがそのままの意味で受け取るべきものだったことを示していると考えられます。瀬戸が内海を救いに行くという意味で、実際に内海の両親殺害計画を阻止したことを指しているのでしょう。
ニダイメ存在の意味
野良猫のニダイメは、二人をつなぐ重要な存在として描かれています。最終回でも二人がニダイメの世話を分担することで、物理的に離れていても絆が続いていることを示しています。 「ニダイメ」という名前の通り、このキャラクターは瀬戸と内海の友情を象徴する存在だと言えます。
内海の今後の成長
最終回で内海のLINEアイコンが変わったことは、彼の内面的な変化の表れ。これまで他人との関わりを避けがちだった内海が、友人との楽しい思い出を大切にするようになったのです。この変化は、瀬戸との友情や樫村さんとの関係進展、そして家族関係の改善といった様々な要因によるものと考えられます。
まとめ
『セトウツミ』の最終回は、「変わらない河原で、変わっていった内海」を描いた物語でした。舞台となる河原は変わらないものの、そこで過ごした時間を通じて登場人物たちは確実に成長を遂げています。特に内海の変化は劇的で、絶望的な状況から友人に救われ、新しい関係性を築いていく姿が描かれました。瀬戸との友情、樫村さんとの恋愛関係、家族との和解など、多くの人間関係が良い方向に変化していきました。
一見すると何も起こらない日常を描いた作品でしたが、実は丁寧に張り巡らされた伏線と、人間の成長を描いた深い物語だったのです。最終回での怒涛の展開と伏線回収は、それまでの穏やかな日常がいかに大切な時間だったかを改めて実感させてくれました。『セトウツミ』は、青春の一場面を切り取った名作として、これからも多くの読者に愛され続けることでしょう。