『鋼の錬金術師』に登場するホムンクルスの中でも、特に印象深いキャラクターがエンヴィーです。

中性的な美貌と残虐な性格を持つこの存在は、多くのファンの心に強烈な印象を残しました。鋼の錬金術師でエンヴィー最後のシーンは、作品屈指の名場面として語り継がれています。

この記事では、エンヴィーの正体や能力、そして心を揺さぶる最期について詳しく解説していきます。

エンヴィーの正体と能力

エンヴィーは「嫉妬」を司るホムンクルスとして生み出された存在です。

ホムンクルス一覧の中でも4番目に造られ、お父様から七つの大罪の一つである「嫉妬」を受け継いでいます。

変身能力の恐ろしさ

エンヴィーの最大の特徴は、あらゆる姿に変身できる能力でしょう。

性別も年齢も姿形も自由自在に変えられるため、作中では何度も人々を欺き、混乱を引き起こしてきました。親しい人物に化けて油断させたり、信頼関係を壊したりと、その戦法は実に卑劣なものです。

変身能力は単なる見た目の変化にとどまりません。声や雰囲気まで完璧に再現できるため、見破ることは極めて困難でした。この能力こそが、エンヴィーを危険な存在たらしめていたのです。

本当の姿は醜い化け物

中性的で美しい姿を保っていたエンヴィーですが、それは仮の姿に過ぎません。

本来の姿は巨大なトカゲのような四足歩行の化け物で、無数の人間の顔が浮き出た異形の存在です。自分の醜い姿を嫌い、美しい人間に嫉妬していたからこそ、美しい姿に変身し続けていたのでしょう。

さらに賢者の石が残り少なくなると、手のひらサイズの小さな生物のような姿になってしまいます。この状態では戦闘能力もほとんどなく、無力な存在へと成り果ててしまうのです。

鋼の錬金術師エンヴィー最後は?

エンヴィーの最期は、マスタング大佐との因縁が引き金となって訪れます。

ヒューズ殺害の告白が招いた復讐

エンヴィーは、マスタング大佐の親友であるヒューズ中佐を殺害した張本人でした。

その事実が明らかになったとき、常に冷静だったマスタング大佐は激しい怒りに支配されます。炎の錬金術を容赦なく浴びせ続け、エンヴィーを徹底的に追い詰めていったのです。

かつてヒューズに変身して彼の妻を欺き、その隙に殺害したエンヴィー。その卑劣な行為への報いが、ついに訪れた瞬間でした。

本体の姿へと追い込まれる

マスタングの猛攻を受け続けたエンヴィーは、次第に擬態を保てなくなっていきます。

巨大な化け物の姿を維持できず、ついには小さな本体の姿へと戻ってしまいました。かつて人間を愚弄し、恐怖で支配していた存在が、手のひらに乗るほど小さく弱々しい姿になったのです。

この時点で、エドワードたちは「これ以上は必要ない」とマスタングを止めようとします。怒りに囚われたマスタングを救うため、そしてこれ以上の復讐が彼自身を壊してしまうことを恐れたからです。

鋼の錬金術師エンヴィー最後の瞬間

小さな姿になってもなお、エンヴィーは口車で状況を打開しようとしました。

しかしエドワードは、エンヴィーの本質を見抜いていたのです。「お前は人間を憎んでいるんじゃない。人間を羨ましがっている」という指摘は、エンヴィーの核心を突くものでした。

「嫉妬」の本質を暴かれる

人間を見下し、嘲笑し続けてきたエンヴィー。

けれど本当は、人間が持つ絆や温かさ、共に生きる強さに憧れていたのです。仲間と支え合い、困難を乗り越えていく人間たちの姿を、心の底から羨んでいました。

その事実を人間に見抜かれたこと。自分でも認めたくなかった弱さを暴かれたこと。エンヴィーにとって、それは何よりも耐え難い屈辱だったのでしょう。

自ら命を絶つという選択

鋼の錬金術師でのエンヴィーの最後は、誰かに倒されるのではなく自らの意志で終わりを選びました。

体内の賢者の石を自分で引きちぎり、消滅する道を選んだのです。「人間ごときに…こんなにも嫉妬していたなんて…」という言葉を残して。

この最期のシーンは、多くの視聴者に強い印象を残しました。残虐非道な悪役でありながら、最後には「かわいそう」という感情さえ抱かせる。それほどまでに人間臭く、哀しい結末だったのです。

エンヴィーの心を揺さぶる名言

エンヴィーは作中で印象的なセリフをいくつも残しています。

「人間って単純だよね!」

人間を見下す傲慢さと同時に、実は人間という存在に強い関心を持っている複雑な心理が滲んでいます。

「いい演出だろう?ヒューズ中佐」

残虐性を象徴する一言。親しい人の姿に化けて近づき、油断させてから殺害する。その卑劣さに多くの読者が怒りを覚えました。

しかし最も心に残るのは、最後に見せた弱さではないでしょうか。人間への嫉妬を認めざるを得なくなり、自決を選ぶまでの葛藤。その表情や言葉には、これまで隠し続けてきた本音が溢れていました。

声優の演技が生んだ説得力

エンヴィーの魅力を語る上で、声優の存在は欠かせません。

FA版で高山みなみさんが演じたエンヴィーは、中性的な声質と幅広い演技力によって、キャラクターに命を吹き込みました。人間を嘲笑する冷酷な声から、追い詰められて怒りと恐怖に震える叫び、そして最後に見せる弱々しい声まで。

その演じ分けは見事で、鋼の錬金術師のエンヴィー最後のシーンでは多くの視聴者が涙しました。残虐な悪役でありながら、どこか憎めない。そんな複雑な魅力を表現できたのは、声優の力があってこそです。

エンヴィーが愛される理由

なぜエンヴィーはこれほど人気があるのでしょうか。

それは、このキャラクターが人間の暗い部分を体現しているから。嫉妬という感情は誰もが持っているもの。他者を羨み、自分にないものを欲しがる。そんな弱さを、エンヴィーは極端な形で表現していました。

中性的で美しい外見も人気の理由でしょう。性別不明という設定が、かえって多くのファンの想像力をかき立てました。残虐でありながら、どこか可愛らしさも感じさせる。その絶妙なバランスが魅力的だったのです。

そして何より、最後に見せた人間らしさ。どれだけ強がっても、本当は人間になりたかった。人間の温かさが欲しかった。その切なさに、多くの人が心を動かされたのです。

まとめ

エンヴィーは『鋼の錬金術師』を代表する悪役の一人です。

変身能力を駆使して人々を欺き、残虐な行為を繰り返してきました。しかし鋼の錬金術師 のエンヴィーの最後は、誰よりも人間らしい感情を見せて消えていったのです。

人間を憎みながら羨んでいた矛盾。強さを装いながら、心の奥には深い孤独を抱えていたこと。その複雑な内面が、エンヴィーというキャラクターを忘れがたい存在にしています。

残酷な悪役でありながら、最後には涙を誘う。そんな魅力的なキャラクターだからこそ、今なお多くのファンに愛され続けているのでしょう。