薬屋のひとりごと

薬屋のひとりごと|猫猫の母親・鳳仙は最強の碁打ちだった!?

薬屋のひとりごと猫猫の母親鳳仙

薬屋のひとりごとの猫猫の母親・鳳仙について紹介しています。

鳳仙が初めて登場するのは、「薬屋のひとりごと6巻29話」です。

「梅毒」というタイトルがつけられた回で、緑青館にある一室で、梅毒にかかった妓女を見舞う猫猫の姿が描かれていますが、この時点では彼女こそが猫猫の母親であるとは語られていません。

相手が誰もいない病床で、布団の上に碁石を並べる姿はとても哀れで、胸が痛くなります。

鳳仙は、かつては緑青館の人気妓女で、美貌もさることながら、囲碁の腕前は作中最強だったのです。

そんな鳳仙がなぜここまで落ちてしまったのか・・、その謎をご紹介していきたいと思います。

薬屋のひとりごとの猫猫の母親・鳳仙の人物像

薬屋のひとりごとの猫猫の母親について語られたのは、「薬屋のひとりごと5巻15話」です。

羅漢曰く「変わり者の妓女で、芸は売れど身は売らず。それどころか客に茶をつぐときも下賤の民に施しを与えるような尊大な目で見ておりました。」とのこと。

鳳仙は、緑青館の人気妓女で、現在の三姫(白鈴・梅梅・女華)を禿としていました。

鳳仙は、特に囲碁や将棋が強く、その強さは作品随一であることは間違いありません。羅漢も囲碁の腕前は相当な達人のようですが、鳳仙と対局してもコテンパンにやられてしまっていたのです。

もともと、羅漢を快く思っていない軍部の同僚が、羅漢に恥をかかせようとして鳳仙との対局を提案していたのですが、果たして結果はその通りになったのですが、羅漢の反応は想像していたのとかなり違っていました。

勝負に負けた羅漢は、「さぞ嬉しそうな顔をしているのだろう」と鳳仙の顔を見るのですが、実際は無表情でどちらかといえば、不機嫌そうな顔をしています。

どうやら、羅漢に侮られていたことが余程悔しかったようです。その様子がどうにもおかしくて、羅漢は腹をかかえて笑い転げます。

勝負を見物していたギャラリーも、羅漢がとうとう狂ってしまったかと思うほどです。

しかし、よくよく考えれば、これまで羅漢は人の顔が碁石。よくて将棋の駒に見えていたはず。それが、こうもはっきりと感情までわかるほどに見て取れたのは、鳳仙が初めてでした。

鳳仙の身請け話が破談になった理由

鳳仙の身請け話が破談になった理由。それは、結論からいえば「子を身ごもってしまったから」です。

妓女は、まだ誰のものにもなっていない者ほど価値があり、一度でも誰かと夜伽をすれば価値は半減。子を孕もうものなら、価値など無いに等しくなります。

その経緯をストーリーと絡めながら少しだけご紹介します。

初対局の後も、羅漢は頻繁に緑青館に現れては、鳳仙と囲碁対局をしている。しかし、鳳仙の人気が上がるにつれて、その頻度はひと月に一度、やがて三月に一度にまで減っていた。

羅漢との対局の後も、客に対する尊大な態度や、芸は売っても体は売らないスタンスは変えていない。それでも、物好きはいるもので、やがて複数の身請け話が舞い込むようになる。

囲碁の対局を繰り返すうちに、鳳仙は徐々に羅漢に心を開くようになる。そして、身請けが決まる直前になって、「たまには賭けをしませんか?」と羅漢との勝負の前に切り出した。

「貴方が勝てば好きなものを与えましょう。私が勝てば好きなものをいただきましょう。」

羅漢はこの条件を飲んで勝負を始める。将棋なら自分に分があるが、あえて囲碁で勝負を挑む。この際、勝敗は関係なかった。なぜならお互いが望むものは共通していたからだ

対局が終わる前に、気づけば二人は体を重ねていた。

この時にできた子が猫猫である。

鳳仙の妊娠がわかったことで、身請け話は破談となった。

しかし、肝心の羅漢は、鳳仙の前からおよそ3年近くも姿を消すことになる。

鳳仙と梅毒と猫猫の小指

鳳仙と初めて夜伽をした羅漢でしたが、その後3年ほど姿を現さなくなります。

鳳仙は妓女としての価値をほとんど失い、緑青館も身請け話を破談にしたことが噂となり、評判を大きく落とすことになります。

仕方なく、鳳仙は夜鷹のように体を売るしかなくなり、やがて梅毒にかかってしまいます。

「羅漢に捨てられた」と思い込む鳳仙は、手紙と一緒に自分の小指と娘の猫猫の小指を羅漢に送りつけるという恐ろしいことまでしていますが、羅漢はそれまで住んでいた家にはおらず、その手紙が本人の目に止まるのは3年後のことでした。

ちなみに「指切りげんまん」の由来は、江戸時代の遊郭・吉原にあります。多くの男性を相手にする妓女が「あなただけは特別」という意味を込めて自分の小指を結婚を約束したい人に送りつけるのです。もしも約束を破ったら「げんまん(拳骨1万回)して、針千本飲ますぞ」という、狂気をはらむ愛情表現でした。

「薬屋のひとりごと7巻36話」で、猫猫が爪紅をしたときに「綺麗になったところで左手の小指の爪はゆがんだままだ」と語っています。これは、小指を切ったのがまだ幼い頃だったため、幾分そこから新しく指が伸びたのですが、やはり完全に元どおりにはならなかったという意味ですね。

漫画版では、鳳仙と羅漢のエピソードはまだそこまで語られていないため、ここでは伏線ととれます。

さらに、「薬屋のひとりごと6巻29話」では、名前は伏せられていますが、初めて鳳仙が登場しています。

29話は、幼い頃の猫猫が鳳仙によって左手の小指を切り落とされるシーンの夢にうなされて目を覚ますシーンから始まっています。

そして、親父殿に頼まれて、梅毒で苦しむ鳳仙に、猫猫が薬を届けに行くというエピソードです。

昔は、猫猫が現れても毛嫌いされて追い払われていたようですが、今はそんな体力もなく、梅毒によって脳をやられているせいか、言葉も忘れてしまったようです。

本来であれば、使い物にならなくなった妓女は追い出されておしまいなのですが、こうやって館の奥の一室を使ってまで看病されているのは、鳳仙が猫猫の母親であることもあるかもしれないですが、かつて鳳仙の禿だった三姫の中でも特に梅梅が献身的に看病しているからでしょう。

鼻はこけおち、かつて賞賛された美貌、言葉も記憶も失くした鳳仙でしたが、不意に布団の上に碁石を一人で並べ始めます。

その姿を見て、憐れむように「莫迦な女・・」と猫猫はこぼします。

まとめ

以上、「薬屋のひとりごとの猫猫の母親・鳳仙」についてご紹介しました。

元々は、人気の妓女だった鳳仙が、たった一度、初めて心を許した男によって、人生を狂わされてしまった姿には胸が痛みます。

相手がいない病床の布団の上で、一人で碁石を並べる姿はとても切なく、猫猫が「莫迦な女」とこぼしてしまいたくなる気持ちもよくわかります。

しかし、実は羅漢が3年もの間姿を消したのには、鳳仙の知らない真実があり、二人はこのあと予想だにしない結末を迎えることになります。

くわしくは、こちらの記事をご覧ください。

▶︎▶︎薬屋のひとりごと|羅漢が身請けした妓女・鳳仙との純愛に涙・・。

羅漢と鳳仙の身請けは、「薬屋のひとりごと8巻」で語られます。2021年7月28日ごろ発売予定です。

まだ随分先ですが、楽しみに待ちたいと思います!

ちなみに、サンデーGX版「薬屋のひとりごと〜猫猫の後宮謎解き手帳〜」では既に収録済です。

一連の流れを読むなら「28話爪紅」〜「30話見送りの舞」までをご覧ください。巻をまたいで7巻〜8巻に収録されています。

▶︎▶︎「薬屋のひとりごと〜猫猫の後宮謎解き手帳〜7巻」を読む