薬屋のひとりごとの羅漢の身請け

薬屋のひとりごとの羅漢が身請けした妓女・鳳仙。羅漢と鳳仙の純愛物語をご紹介しています。

猫猫との将棋勝負で負けた羅漢は、「緑青館の妓女を一人選んで身請けする」ことになります。

もちろん猫猫には狙いがあって、一つは羅漢に恋心を抱いている梅梅を身請けしてもらうこと。そしてもう一つは、緑青館で病床に伏せている鳳仙に羅漢が気づいて身請けすることでした。

羅漢と鳳仙の間にあった切なすぎる物語をご紹介します。

薬屋のひとりごとの羅漢の身請け

「薬屋のひとりごと7巻36話」で、羅漢は猫猫との象棋勝負に負けて「緑青館の妓女を一人選んで身請けする」ことになります。

猫猫と羅漢の象棋勝負について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

【漫画】薬屋のひとりごと7巻のネタバレ〜黒幕は誰?翠苓が行方不明に!〜

それでは、羅漢が緑青館に出向いて身請けする妓女を選ぶまでを、基本的に小説版のストーリーを元にご紹介します。

心情描写などは、幾分個人的な解釈が含まれているので、オリジナルとは異なる部分がありますのでご承知おきの上で読み進めてください。

羅漢が目を覚ますと、「お目覚めになりました?」と梅梅が声をかける。どうやら酒を飲まされて酩酊しているうちに、緑青館に運び込まれたようだ。

運び込んだのは、もちろん壬氏とかいう宦官と愛娘だろう。その当人たちは、すでにこの場所にはいないようだ。

ひとまず、側にいる梅梅に「いつも迷惑をかけてすまない。」と頭を下げる。「あなたは緑青館に相場の倍以上の賠償金を支払って客として来られたのだから迷惑だなんて・・」と梅梅は、羅漢の言葉を否定する。

それでも、緑青館で羅漢のことをまともに相手してくれるのは梅梅だけだった。羅漢にしてみれば、かつて梅梅が鳳仙の禿をしていた頃、将棋を教えてあげたことがある。そのことで気を使ってくれているのだろうと思っていた。

この男、争いごとには人並み外れた直感が働くくせに、恋愛に関しては人並み以上に鈍感なようだ。

「目が覚めたかい?」

やり手婆がやってきた。「うちの妓女を一人身請けするって?」「銀の一千二千じゃきかないよ。」とはっぱをかける。

羅漢は、10万は無理だが、1万2万ならいくらでも、と答えた。自分は娘との勝負に負けた。愛娘との約束は守らねばならない。

・・あの子の母親との約束は守れなかったのだから。

羅漢の言葉を聞いたやり手婆は、三姫も呼びつけて羅漢に選ばせるつもりのようだ。やり手婆も梅梅の気持ちには気づいているのだろう。

そして、恐らく猫猫もそのことを予想して、賭け象棋をしたのだろう。猫猫も梅梅には随分と恩がある。才能のない自分に踊りを根気強く教えてくれたのも梅梅だった。だから幸せになってほしいと願うのは当然のことだ。

ただ、猫猫には梅梅の他にもう一人、羅漢が選ぶ可能性のある妓女を想定していた。

さて、妓女を選ぶといっても自分にはどうせ皆おなじ碁石の顔に見えている。それなら、いつもよくしてくれている梅梅にするべきか・・。

羅漢が決めあぐねていると、梅梅が口を開く。

「私とて妓女の矜持は持ち合わせています。選ぶならちゃんと選んでくださいね。」

そういって、部屋の窓をあける梅梅。

すると、どこからか聞き覚えのある歌声が聞こえる。

「この声は・・!?」

羅漢は、窓から部屋を飛び出し、声のする離れた小谷の方へ走る!途中で、小石につまづいて転びそうになりながら「こういうことならもっと運動しておくべきだった。」と、訓練をさぼっていた自分を殴りたい気持ちにかられる。

とにかく今は、一刻、一瞬でも早く、声のする小屋へたどり着きたいのだ。

羅漢と鳳仙の過去、すれ違った二人が結ばれる

羅漢と鳳仙が出会ったのは、今からもう20年近く前になる。

囲碁を打てば軍部で負けなしだった羅漢は、花街最強の碁打ちと名高い鳳仙と対局することになる。

「所詮は井の中の蛙」そう思って、いざ勝負をしてみたら蛙は自分の方であった。

囲碁で不利な白番(後攻)を持ったとはいえ、その差は歴然。圧倒的な敗北だ。

さぞかし喜んでいるだろうと、自分を打ち負かした妓女の方を見ると、とても腹立たしそうな顔をしている。賢さゆえに自分が侮られていたことに気づいていたのであろう。勝利してなおまだ怒りは収まっていない様子だ。

それとも、これがこの妓女の普段通りなのか。

普段通りといえば、いつもなら碁石に見える人の顔なのに、なぜかこの鳳仙という妓女だけは、はっきりとその顔を見ることができた。

それから、羅漢は囲碁を打つためだけに、緑青館に通うようになる。

鳳仙は、とても変わった妓女で、芸は売っても体は売らず。客に茶をつぐときも尊大な目で、下賤のものに施しを与えるようにやっていた。

そんな鳳仙でも、羅漢には少しずつ心を開いていったようだ。

鳳仙は、いつしか花街でも指折りの人気妓女となり、それに伴って羅漢が会える回数も、最初は一月に一回だったのが、やがて三月に一回ようやく会えるくらいにまで減っていた。

そして、羅漢の他にも物好きはいるようで、鳳仙に複数の身請け話が舞い込む。

鳳仙の身請け先が決まる直前になって、ようやく羅漢は久方ぶりに鳳仙に会うことができた。いつものように勝負を始めようとすると、鳳仙が口を開いた。

「不思議です。まさか自分に身請けの話が来るとは思いませんでした。」

驚いた羅漢は、身請け金を聞くと、自分には到底手を出せない金額が付いていた。このままでは鳳仙が何処の馬の骨ともわからぬ男のものになってしまう。

金を払えない自分ができることといえば・・、この妓女の価値を強引に下げる他ない。その方法は難しいことではない。子をはらませればよいのだ。

そのような考えが羅漢の頭を過ぎるのだが、かろうじで理性がそれを諌めた。

そもそも、この女が自分に好意を抱いてくれていなければ、たとえ子ができたとしても、堕胎されて終わりだ。

すると、鳳仙が珍しい提案をしてきた。

「たまには賭けをしましょう。貴方が勝てば好きなものをさしあげましょう。私が勝てば好きなものをいただきます。」

羅漢は、鳳仙の提案を承諾し、初めての賭け勝負が始まる。二人にとって、勝敗などどっちでもよかった。なぜなら二人が望むものは同じものだからだ。

勝負が着くよりも先に、二人の体が重なり合った・・。

そうして生まれたのが、猫猫である。

同じ頃、後宮で医官をしていた叔父貴が失脚する。有能な癖して要領が悪いのだ。羅漢は過去にその男と親しくしていたため、とばっちりを受けてしまうことを心配した一族の長である父親が、羅漢をしばらく遊説にださせたのだった。

父親は軍部でも上官であったため、逆らうことはできず、素直に家を出る他なかった。半年くらいで戻れるだろうと思っていたのはどうやら甘かったらしく、実際戻って来るのに三年もの年月をかけてしまった。

羅漢が家に戻ると、鳳仙からの文が何通も送られてきていた。そのうちの一つをあけると、紙には血が滲んでいて、一緒にあった巾着袋をあけると、その中には大人の小指と、赤子のものと思われる小さな小指が一緒に入っていた。

異変を察知した羅漢は、急いで緑青館へ向かう。やり手婆に会うなり「鳳仙は?」と聞くが、「ここにはもういないよ!誰のせいでこんなことになったと思ってる!」といって、箒で力一杯殴られて追い出されてしまった。

妊娠して身請け話を破談にしたことで、鳳仙はもちろん、緑青館もしばらくひどい状態に追い込まれたようだ。その間、鳳仙は夜鷹のように客をとり、そのうちの誰かから梅毒をうつされてしまったのだ。

羅漢はその場に崩れ落ちて泣き叫ぶが、この結果を招いたのは、あの日の安易な自分の行動である。

雨音に混じって男の鳴き声が花街に響き渡る・・。

鳳仙と一夜を共にした日、鳳仙はある歌を口ずさんでいた。それは、母親を知らない自分が唯一持っている母親の記憶なのだという。

緑青館の窓から外に出て、昔聞いたあの歌声のする小屋へ走る・・。

声がだんだん大きくなる。同じくらい自分の心臓も大きく音を立てて脈を打つ。

小屋の扉をあけると、そこには昔とは別人に変わり果てた一人の妓女がいた。もはや、余命幾ばくもない・・。

「戻んな!ここは病人部屋だよ!」そう叫びながらやり手婆が追いかけてきた。

「この女だ!」

「バカいってんじゃないよ!」とやり手婆が否定する。

「誰でもいいといったのはアンタだろう。この女でもいいはずだ!」そう言って羅漢は、今度は目の前にいる妓女に話しかける。

「・・手を。」

妓女が手を差し出すと、羅漢はその手に碁石をこぼした。

鳳仙は梅毒によって脳をやられて言葉を失っている。それでも、感情は残っていたようで頬を赤らめて自分の手に置かれた碁石と羅漢を見た。

「私はこの妓女を身請けするよ。金なら十万でも二十万でも出してやる。」

「彼女じゃないなら誰もいらない・・。」

羅漢を猫猫が毛嫌いする理由

鳳仙の身請けを祝う宴は7日間も続けて夜通し行われた。

羅漢が鳳仙を身請けしたことを、梅梅の文で知った猫猫は「そっちを選んだか。梅梅にしておけばよかったのに。」とこぼす。

梅梅の書いた手紙には、ところどころ涙でシミができている・・。

それが悲しみの涙なのか、はたまた嬉し涙なのか猫猫ならすぐにわかったかもしれない。

梅毒にかかり、普通なら妓楼を追い出されるところを、懸命に看病し続けてきたのは、他ならぬ梅梅だからだ。

文と一緒に送られてきたのは踊り子の衣装だった。花街では妓女が身請けされるとき、送り出す妓女はそれを祝うかのように踊りつづける。

猫猫は、壬氏の屋敷の塀によじのぼり、梅梅に教わった踊りで鳳仙の身請けを祝った。

「てっきり羅漢どののことを恨んでいるのかと思った」という壬氏に、猫猫は「嫌ってはいるが恨んではいない。」と答える。

羅漢がうまく当ててくれたから、今こうして私がいるのだ。

「当てて・・」と壬氏が眉をひそめるが、猫猫は続けて「謀られたのは軍師どのの方かもしれません。妓女の同意がなければ、子を孕むことはありません。」という。

たしかに、例え子を孕ませても、堕胎されては意味がない。子を産んだということは、鳳仙もその気があったということだ。つまり、「男を自分のものにするために、子を産んだのだ。」

しかし、鳳仙の目論見は外れて、羅漢はその後3年も姿を見せなくなる。

緑青館に自分と鳳仙の娘である猫猫がいることを知ると、羅漢は足を運んでいたが、その度にやり手婆に箒で袋叩きにされ、血まみれになって追い返されていたそうだ。

顔中傷だらけで、「パパだよ。」という羅漢に、幼いころの猫猫が恐怖を抱いたとしても無理はない。

しかし、そういった花街での普通じゃない日常が、今の猫猫の動じない性格をつくるのに、いくらか役立っているのは確かだった。

「嫌ってはいても恨んではいない。」

そうはいっても、露骨に嫌がっているだろう?と壬氏が猫猫に尋ねる。

すると猫猫は、

「あの男に“パパって読んで(ハート)”と言われたらどうですか?」と聞き返した。

壬氏は「・・・メガネをかち割りたくなるな。」と答えるのだった。

猫猫は、めずらしく壬氏と気があったようだ。

その様子を見て、子供のいる高順は天井を見上げて、何やら哀れみの表情だ。

「この世に、好きで嫌われる父親はいないということも知っておいてください。」

高順の言葉に、二人は一瞬言葉を失ったのだった。

まとめ

以上、「薬屋のひとりごとの羅漢の身請け」についてご紹介しました。

猫猫が羅漢のことを、登場したときから毛嫌いしていたので、なんとなくとても嫌な奴なのかと思っていたのですが、身請けの話を読んで、印象ががらりと変わりました。

そもそも羅漢は、羅門(猫猫の養父)が認めるほどの才能の持ち主でありながら、人の顔が判別できないという特殊な性質のせいで、随分肩身の狭い人生を歩んできていたようです。

そんな羅漢が初めて本気で女性を愛したかと思えば、自分ではどうしうもない理由で離れ離れになり、ようやく戻ってきたら、その女性は変わり果てた姿になっていた・・だなんて切なすぎます。

それでも、最終的には二人が結ばれて本当に良かった・・。

羅漢と鳳仙の身請けは、「薬屋のひとりごと8巻」で語られます。2021年7月28日ごろ発売予定です。

まだ随分先ですが、楽しみに待ちたいと思います!

何よりも、「猫猫の踊る姿」が気になって仕方ありません!ビッグガンガン版の猫猫の印象からは、「歌ったり踊ったりする姿」など想像もつかないのです笑

ちなみに、サンデーGX版「薬屋のひとりごと〜猫猫の後宮謎解き手帳〜」では既に収録済です。

一連の流れを読むなら「28話爪紅」〜「30話見送りの舞」までをご覧ください。巻をまたいで7巻〜8巻に収録されています。

猫猫が踊る姿も描かれていますよ。

▶︎▶︎「薬屋のひとりごと〜猫猫の後宮謎解き手帳〜7巻」を読む

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